
プログラマーとして世界中の開発者と協力する際、GitHubでのコミュニケーションは避けて通れません。英語でコメントを書くことに抵抗を感じる方も多いかもしれませんが、実はコツさえ掴めば難しいことではありません。プログラミングの現場で使われる英語は、日常会話よりも簡潔で型が決まっているからです。
この記事では、GitHubでの英語コメントの書き方を、基本のルールから実践的なフレーズまで丁寧に解説します。コミットメッセージやプルリクエスト、コードレビューなど、シーン別の具体的な表現を身につけることで、英語での開発がスムーズになります。英語の上達を目指しながら、開発効率も高めていきましょう。

GitHubでのコミュニケーションにおいて、最も重要なのは「簡潔さ」と「明確さ」です。日本語のビジネスメールのように丁寧すぎる表現は、かえって真意を伝えにくくすることがあります。ここでは、プログラマーが英語でコメントを書く際に、まず意識すべき土台となるルールについて解説します。
GitHubのコミットメッセージなどで最も一般的なのは、文章を動詞の原形から始めるスタイルです。これは「命令形」と呼ばれますが、決して相手に対して威圧的なわけではありません。Gitの標準的な慣習として「このコミットを適用すると、〇〇という操作を行う」という意味を込めて使われます。
例えば、「バグを修正しました」と言いたい場合、日本語の感覚だと「Fixed bug」と過去形にしたくなりますが、標準的には「Fix bug」と書くのが一般的です。これにより、メッセージが短くなり、一覧性が向上するというメリットがあります。まずはこの形に慣れることが、GitHubでの英語上達への第一歩となります。
Gitの公式ドキュメントでも、コミットメッセージの要約行(1行目)には命令形を使うことが推奨されています。最初は違和感があるかもしれませんが、多くのプロフェッショナルが採用しているルールです。
コードの変更内容を伝えるコメントでは、ダラダラと長い文章を書く必要はありません。むしろ、一目で何をしたかがわかる短いフレーズが好まれます。主語の「I(私は)」を省略するのも一般的です。なぜなら、GitHub上のアクションは誰が行ったかログを見れば明らかだからです。
「I have updated the CSS file to fix the layout issue.」と書くよりも、「Update CSS to fix layout」と書く方が、プログラマー同士のやり取りとしては自然でスマートです。重要なキーワード(何をしたか、どこを触ったか)を文頭に持ってくることで、読み手の負担を減らすことができます。
過去に行われた変更であっても、コメントでは現在形が多用されます。特にプルリクエスト(PR)のタイトルや説明文では、現在形を使うことで「現在のコードベースに対する変更内容」が鮮明になります。過去形(fixed, added)を使う開発者もいますが、迷ったら現在形(fix, add)を選ぶのが無難です。
ただし、PRの説明文で「以前は〇〇だったが、現在は××に変更した」という文脈で背景を語る場合には、過去形と現在形を使い分ける必要があります。基本的なステータス報告やアクションの記述は現在形で行う、というルールを自分の中に持っておくと、文章作成で迷う時間が減ります。
コメントの冒頭に [Fix] や [Add]、[Docs] などのタグ(接頭辞)をつける手法は、多くのプロジェクトで採用されています。これにより、コメントの内容がバグ修正なのか、新機能追加なのか、あるいはドキュメントの更新なのかを瞬時に判別できるようになります。
このルールを導入すると、英語の文章全体を考える負担がさらに軽くなります。タグによって大枠の意味が伝わっているため、その後の説明はより最小限で済むからです。チームで共通の接頭辞を決めておくと、コミュニケーションの齟齬が激減し、プロジェクトの管理が非常に楽になります。
コミットメッセージは、後から履歴を振り返る際に最も頻繁に参照される情報です。適切な英語表現を使うことで、自分だけでなくチームメンバーも「いつ、何が、なぜ変わったのか」を正確に把握できるようになります。ここでは、具体的によく使われる英単語やフレーズを見ていきましょう。
コミットメッセージでよく使われる動詞は、ある程度決まっています。これらをリストとして頭に入れておくだけで、コメントの書き方に迷うことがなくなります。以下の表に、プログラマーがよく使う基本的な動詞をまとめました。
| 動詞 | 意味・用途 |
|---|---|
| Fix | バグや不具合を修正する |
| Add | 新しいファイルや機能を追加する |
| Update | 既存の機能やファイルを更新・調整する |
| Remove | 不要なコードやファイルを削除する |
| Refactor | 動作を変えずにコードの構造を改善する |
| Improve | パフォーマンスや可読性を向上させる |
単に「Fix bug」と書くよりも、具体的に何が直ったのかを添えるのが親切です。例えば、「Fix login crash on iOS」や「Fix typo in README」のように、「Fix + 対象 + 状況」の形で書くと非常にわかりやすくなります。typo(タイプミス)やcrash(強制終了)といった用語は頻出です。
また、特定のIssue番号(課題番号)に関連する修正の場合は、「Fix #123」のように番号を添えるのがGitHubの慣習です。これにより、コミットと課題が自動的にリンクされ、追跡が容易になります。言葉を飾るよりも、こうした機械的な紐付け情報を正確に記すことが、良いGitHubコメントの条件です。
「Add」は全く新しいものを導入したときに使い、「Update」はすでにあるものを変更したときに使います。この使い分けが明確だと、レビュアー(確認者)はどの程度の変更範囲を想定すべきか判断しやすくなります。例えば、新しく検索画面を作ったなら「Add search screen」となります。
一方で、既存の検索ロジックを微調整した場合は「Update search logic to handle empty results」と書きます。このように、「何のために変更したのか(to handle...)」を付け加えると、意図が明確に伝わります。小さな違いですが、プロジェクトの透明性を高める重要なテクニックです。
よくある使い分けの例
・Add: 初めて作るボタンやAPIエンドポイントなど。
・Update: ボタンの色を変える、APIのレスポンス形式を一部変更するなど。
・Remove: 使わなくなった古いライブラリやデバッグ用のログ出力など。
機能を変えずにコードを綺麗にした場合は、「Refactor」を使います。リファクタリングは挙動に変化がないはずなので、そのことを明記するとレビュアーは安心します。「Refactor user module for better readability(可読性向上のためにユーザーモジュールをリファクタリング)」といった具合です。
可読性は「readability」、保守性は「maintainability」という言葉をよく使います。なぜリファクタリングが必要だったのか、その「目的」を短いフレーズで添えることが大切です。これにより、ただの個人的な好みの変更ではなく、プロジェクトにとって価値のある変更であることを示せます。
プルリクエスト(PR)は、変更内容をチームに説明し、マージ(統合)の許可を求める重要なプロセスです。GitHubでは、マークダウン形式を使って構造的に書くのが一般的です。定型的なセクションを設けることで、書く側も読む側も効率が劇的に向上します。
まずは、このPRが何を目指しているのかを1?2文で端的に説明します。冒頭に「This PR introduces...(このPRでは〇〇を導入します)」や「This PR fixes...(このPRでは〇〇を修正します)」というフレーズを使うとスムーズです。ここで詳細を書きすぎず、結論から述べるのがポイントです。
英語での説明に自信がない場合は、箇条書きを活用しましょう。「- Add user profile page」「- Fix button alignment issue」のように、コミットメッセージを並べるだけでも十分な概要説明になります。完璧な文章を目指すより、事実をリストアップする方が誤解を招きにくく、プログラマーらしい書き方と言えます。
「なぜこの変更が必要なのか」という背景情報は、レビューの質を左右します。特に修正が複雑な場合や、特定の仕様に基づいている場合は、「The current implementation has a performance issue.(現在の実装にはパフォーマンス上の課題があります)」のように現状の不満点から書き始めると伝わりやすいです。
また、外部資料がある場合は「As discussed in #456(#456で議論された通り)」や「According to the design specification(デザイン仕様書に基づき)」といった表現も使えます。根拠を提示することで、レビュー時のコミュニケーションがスムーズになり、差し戻しのリスクを減らすことができます。
レビュアーが変更内容を自分の環境で確認するための手順を書きます。ここでも命令形が役立ちます。「1. Run 'npm install'」「2. Open login page」「3. Click the red button」といったステップを明確にします。手順が明確であればあるほど、レビューのスピードは速くなります。
もし画面の変更を伴う場合は、スクリーンショット(Screenshots)や動画を添付するのがGitHubでのマナーです。言葉で「The UI looks better(UIが良くなりました)」と言うよりも、1枚の画像を見せる方が圧倒的に説得力があります。英語が苦手な人ほど、視覚的な情報に頼るのは非常に賢い戦略です。
便利な定型フレーズ
・Please refer to the screenshots below.(以下のスクリーンショットを参照してください)
・Tested on Chrome and Safari.(ChromeとSafariでテスト済みです)
・No breaking changes.(破壊的な変更=既存機能への悪影響はありません)
マージする際のリスクや、今後の課題(TODO)があれば「Notes」セクションに記載します。「This PR only affects the UI.(このPRはUIにのみ影響します)」といった影響範囲の限定や、「Database migration is required.(データベースの移行作業が必要です)」といった警告は、事故を防ぐために不可欠です。
また、「I will fix the remaining issues in a follow-up PR.(残りの課題は後続のPRで修正します)」と書くことで、今回のPRのスコープ(範囲)を明確にできます。欲張って一度にすべてを説明しようとせず、分かっている懸念点を正直に共有することが、チームからの信頼につながります。

コードレビューは、プログラマー同士が互いに学び、コードの質を高める場です。批判的になりすぎず、かつ正確に改善点を伝えるための英語表現が求められます。ここでは、GitHubのレビューコメントで使える、角の立たないスマートなフレーズを紹介します。
「Fix this!(これを直せ)」と直接的に書くと、相手によっては攻撃的に感じられることがあります。提案の形を取るには、「How about...?」や「Consider using...」を使うのがおすすめです。例えば、「How about renaming this variable for clarity?(わかりやすさのために、この変数をリネームするのはどうですか?)」といった具合です。
また、「It might be better to...(?した方がいいかもしれません)」という表現も便利です。これにより、断定を避けつつ、建設的なアドバイスとして伝えることができます。相手の意図を尊重しつつ、より良い方向へ導くためのコミュニケーションを意識しましょう。
コードの意図がわからないときは、素直に質問しましょう。「What is the purpose of this line?(この行の目的は何ですか?)」や「Why do we need this check here?(なぜここでこのチェックが必要なのですか?)」といったシンプルな質問で十分です。無理に難しい言葉を使う必要はありません。
より丁寧に聞きたい場合は、「Could you explain why...?(なぜ?なのか説明していただけますか?)」という形を使います。自分の理解不足かもしれないというニュアンスを含めたいときは、「I'm curious about...(?について気になっています)」と始めると、より柔らかい印象になります。質問はコードの理解を深めるための大切な手段です。
コードレビューは悪いところを指摘するだけではありません。良いコードを見つけたら積極的に褒めましょう。短い一言でも、書いた本人のモチベーションは大きく上がります。「LGTM(Looks Good To Me)」は有名ですが、それ以外にも「Nice catch!(ナイスな発見!=バグを見つけてくれてありがとう)」といった表現があります。
「Clean implementation!(綺麗な実装ですね!)」や「Great idea!(素晴らしいアイデアです!)」といったポジティブなフィードバックは、チームの雰囲気を良くします。GitHubでは絵文字(??, ??, ??)も併用されることが多く、テキストだけでは伝わりにくい感情を補ってくれます。積極的に活用しましょう。
ポジティブなレビューフレーズ集
・Looks great!(素晴らしいですね!)
・I like this approach.(このアプローチは良いですね)
・Thanks for the quick fix!(素早い修正ありがとうございます!)
・Clear and easy to read.(明快で読みやすいです)
動作には影響しないけれど、インデントや命名規則などの細かい点を指摘したいときは、コメントの冒頭に「Nit:」や「nits:」と書きます。これは「Nitpick(重箱の隅をつつく)」の略で、「些細な指摘なので、気にしすぎないでください」というサインになります。
「Nit: Add a trailing comma.(細かい点ですが、末尾にカンマを追加してください)」のように使います。これを使うことで、レビュイー(レビューを受ける人)は「これはクリティカルな問題ではないんだな」と安心して対応できます。お互いの心理的ハードルを下げるための、GitHub特有の便利なテクニックです。
GitHubのIssueは、バグの報告や機能の要望を管理するツールです。特にオープンソースプロジェクトでは、世界中の人に状況を伝える必要があります。相手が再現環境を構築できるように、情報を整理して書く技術が求められます。
バグ報告で最も大切なのは、タイトルで「何が起きているか」を要約することです。「Login doesn't work(ログインができない)」よりも「Login button remains disabled after entering credentials(認証情報を入力してもログインボタンが無効のまま)」のように、具体的な現象をタイトルにします。
本文では、現在のバージョンや環境(ブラウザ、OS)を明記することから始めます。「Current behavior(現在の挙動)」としてバグの内容を書き、その後に「Expected behavior(期待される挙動)」を対比させることで、何が問題なのかが誰の目にも明らかになります。この対比構造は、英語での論理的な説明に非常に適しています。
バグを修正するには、まず再現させる必要があります。再現手順は「Steps to reproduce」として、1から順に箇条書きで記述しましょう。ここでも、余計な主語を省いた命令形が活躍します。「1. Open the app」「2. Go to settings」「3. Toggle the switch」といった具合です。
誰が読んでも同じ操作ができるように、曖昧な表現を避けるのがコツです。例えば「クリックする」は「Click」、「入力する」は「Type」や「Enter」、「スクロールする」は「Scroll down」を使います。ステップが多すぎる場合は、なるべく手順を最小限に絞って報告するのが、優れたプログラマーとしてのマナーです。
「期待される結果(Expected behavior)」と「実際の結果(Actual behavior)」を分けるのは、Issue報告の鉄則です。期待される結果には「The user should be redirected to the dashboard.」のように、「should be」を使って「?されるべきだ」というニュアンスを込めるのが一般的です。
対する実際の結果には「The user stays on the login page without any error message.」のように、現状を淡々と記述します。この2つが並んでいることで、開発者は修正のゴールを即座に理解できます。英語の文章力よりも、情報の整理の仕方が重要であることを忘れないでください。
既存の不具合ではなく、「こんな機能が欲しい」という提案をする場合は、その機能によって「どのような価値(Value)」が生まれるかを強調します。冒頭に「I would like to suggest a new feature to improve...(?を改善するための新機能を提案したいです)」と書くと丁寧です。
なぜその機能が必要なのか、ユースケース(具体的な利用シーン)を添えると採用されやすくなります。「It would be helpful for users who...(?なユーザーにとって役立つはずです)」という表現を使い、その機能がプロジェクト全体にプラスであることをアピールしましょう。独りよがりな要望ではなく、貢献の姿勢を見せることが大切です。
GitHubでの英語は、日々の開発の中で少しずつ磨いていくものです。机に向かって勉強するだけでなく、実際のコードやプロジェクトに触れながら学ぶのが最も近道です。ここでは、実践を通じて英語力を向上させるための具体的なヒントを紹介します。
世界中で使われている有名なライブラリ(React, VS Code, Goなど)のGitHubリポジトリは、英語表現の宝庫です。そこでのプルリクエストやコミットメッセージは、非常に洗練されており、業界の標準といえる書き方がなされています。自分が使っているツールの裏側を覗いてみましょう。
特に、「マージされたプルリクエスト」を重点的に見るのがおすすめです。どのような説明がなされ、レビュアーとどのようなやり取りがあったのかを観察してください。そこで見つけた便利なフレーズをメモしておき、自分のプロジェクトで真似して使ってみるのが上達への最短ルートです。
有名プロジェクトには「Contribution Guide(貢献ガイド)」があり、コミットメッセージの書き方がルール化されていることも多いです。そのルールを読むだけでも、プロフェッショナルな英語の使い方が学べます。
毎回ゼロから英語を考えるのは大変です。自分がよく使うフレーズや、GitHubのPRテンプレート機能を活用して、あらかじめ「型」を作っておきましょう。例えば、バグ修正用、機能追加用、ドキュメント更新用といった具合に、いくつかのパターンを用意しておきます。
一度「この書き方は伝わりやすい」と確信が持てたフレーズは、自分の資産になります。Notionやメモ帳などに自分専用のフレーズ集を作っておくと、忙しい開発作業の中でも迷わずに済みます。繰り返して使うことで、その表現が自然と自分のものになり、やがて何も見ずに書けるようになります。
最近ではChatGPTなどのAIツールを使って、日本語から自然な技術英語に変換することが容易になりました。ただし、丸投げするのではなく「GitHubのコミットメッセージとして適切な表現にして」や「プログラマーが使う自然なフレーズを教えて」と条件を指定するのがポイントです。
また、DeepLなどの翻訳ツールを使う際も、一度英語にしたものを再度日本語に訳して(再翻訳)、意味がズレていないか確認する習慣をつけましょう。AIが作った英文を見て、「なぜこの動詞が選ばれたのか」を考えることで、単なる翻訳作業が英語学習へと変わります。ツールはあくまで補助として使い、最後は自分の言葉として発信しましょう。

GitHubでの英語コメントの書き方は、決して難しいものではありません。大切なのは、完璧な英文法を目指すことではなく、「動詞から始める」「簡潔に書く」「型を利用する」といったプログラミングの世界特有のルールに慣れることです。今回ご紹介したフレーズやテンプレートを活用すれば、今日からでも英語での発信を始められます。
コミットメッセージやプルリクエスト、コードレビューでのやり取りは、あなたの技術力を世界に伝える大切な手段です。言葉の壁を少しずつ低くしていくことで、海外の最新技術に触れる機会が増え、開発者としてのキャリアも大きく広がります。まずは小さな修正の「Fix typo」から始めて、徐々に表現の幅を広げていきましょう。
英語はツールに過ぎませんが、プログラマーにとっては世界中の仲間と協力するための強力な武器になります。この記事で学んだポイントを意識しながら、日々のGitHubでの活動を楽しんでください。積み重ねたコメントの一つひとつが、あなたの英語力とエンジニアとしての信頼を築いていくはずです。