
近年、日本で生活する外国人が増加しており、不動産仲介の現場でも英語での案内を求められる機会が非常に増えています。外国人のお客さまを接客する際、言葉の壁や独特な賃貸慣習の説明に不安を感じる担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産仲介の現場ですぐに使える英語フレーズや、外国人客に日本のルールを分かりやすく伝えるコツを詳しく解説します。英語に自信がない方でも、ポイントを押さえればスムーズな案内が可能になります。お客さまとの信頼関係を築き、成約率を高めるための実践的なノウハウを身につけていきましょう。

外国人のお客さまを案内する際、単に英語を話すだけでなく、相手が日本のどのような点に不安を感じているかを理解することが大切です。まずは不動産仲介の現場で求められる姿勢と、基本的なコミュニケーションの考え方について整理していきましょう。
不動産仲介の現場では、専門用語が多く飛び交います。これらを英語でどう表現するかを知っておくだけで、案内のスムーズさが格段に変わります。例えば「間取り」は「floor plan」、「日当たり」は「natural light」、「徒歩〇分」は「〇 minutes walk」と表現します。
日本の物件特有の「LDK」という表記は海外では一般的ではないため、「One bedroom apartment with a living and dining area」のように具体的に説明してあげると親切です。また、専有面積を伝える際は平方メートル(square meters)だけでなく、イメージしやすいように「畳(tatami mats)」の概念も軽く触れると良いでしょう。
まずは、よく使う単語をリスト化しておき、案内の際にいつでも確認できるようにしておくことが第一歩です。難しい単語を覚えるよりも、中学生レベルの英語で「どのような状態か」を説明することを意識してみてください。
日本で家を探す外国人客は、言語だけでなく「審査に通るだろうか」「外国人は断られないか」という強い不安を抱えています。そのため、案内の際はまず「歓迎している」という姿勢を言葉と態度で見せることが、信頼関係の構築に直結します。
また、海外の不動産取引は日本よりもスピード感が早い場合が多く、良い物件があればその場で決断したいというニーズも高いです。逆に、日本の複雑な手続きや多額の初期費用に対しては、非常に慎重になる傾向があります。相手の文化背景を尊重しつつ、日本のルールを論理的に説明する姿勢が求められます。
笑顔での挨拶はもちろんのこと、相手の質問に対して「It's a common rule in Japan(それは日本の一般的なルールです)」と一言添えるだけで、理不尽さを感じさせずに納得してもらいやすくなります。精神的なハードルを下げる工夫を凝らしましょう。
英語力に不安がある場合でも、視覚的な資料やテクノロジーを活用することで十分にカバーできます。例えば、英語表記を併記した物件資料(マイソク)や、内見時のチェックリストをあらかじめ用意しておくと、言葉足らずな部分を補うことができます。
最近では、スマートフォンの翻訳アプリや、不動産専門の多言語対応チャットツールも充実しています。これらを「正確な情報を伝えるための補助」として使うことは、決して失礼にはあたりません。むしろ、間違いを防ごうとする真摯な姿勢としてポジティブに受け止められることが多いです。
内見中にスマートフォンのコンパスアプリを使って方角を示したり、Googleマップで周辺のスーパーや病院を一緒に確認したりするのも効果的です。言葉以外の情報量を増やすことで、案内の質を劇的に向上させることが可能になります。
実際の案内(内見)の現場で、どのような英語を使えば良いのかを具体的なシーン別に見ていきましょう。現場では流暢さよりも、相手の目を見てはっきりと話すことが重要です。
最初のアプローチで信頼を得るために、丁寧かつフレンドリーな挨拶を心がけましょう。待ち合わせの際には「Thank you for coming today.(今日はお越しいただきありがとうございます)」と伝え、名刺を渡しながら自己紹介を行います。
物件に到着した際、日本の大きな特徴である「靴を脱ぐ」習慣を説明する必要があります。「Please take off your shoes here.(ここで靴を脱いでください)」と伝え、用意したスリッパを差し出します。このとき「It’s a Japanese custom to keep the floor clean.(床を清潔に保つための日本の習慣です)」と理由を添えるとスムーズです。
入室後は「Please feel free to look around.(自由にご覧ください)」と声をかけ、お客さまが自分のペースで見られるように配慮します。質問を待つだけでなく、「Would you like to see the kitchen first?(先にキッチンを見ますか?)」とリードしてあげるのも良いでしょう。
各部屋を案内する際は、物件の強みを具体的に伝えます。例えば収納については「This closet has plenty of storage space.(このクローゼットは収納スペースがたっぷりあります)」と言います。また、エアコンの有無や使い方も重要なポイントです。
キッチンの説明では「This is an induction cooktop, so it's very safe.(これはIHコンロなので、とても安全です)」や「The faucet has a built-in water filter.(蛇口には浄水器が内蔵されています)」といった細かい設備の説明が喜ばれます。海外ではオーブンが標準装備の国も多いため、ない場合は近くの家電量販店で買えることを伝えると安心感が増します。
バルコニー(Balcony)については、洗濯物を干す場所であることを説明しましょう。「You can dry your laundry here.(ここで洗濯物を干せます)」というフレーズは必須です。日本特有の風呂場とトイレが別である「分離型(Separate type)」も、清潔感を重視するお客さまには大きなアピールポイントになります。
設備説明で役立つ頻出単語リスト
・Storage(収納)
・South-facing(南向き)
・Soundproof(防音)
・Renovated(リフォーム済み)
・Washing machine space(洗濯機置き場)
家の中だけでなく、周辺の環境を英語で伝えることも重要です。外国人客は、多言語対応の病院や、自国の食材が買えるスーパーがあるかなどを気にすることが多いです。「There is a 24-hour convenience store nearby.(近くに24時間営業のコンビニがあります)」といった情報は非常に価値があります。
駅までの道のりについても、「The path to the station is flat and easy to walk.(駅までの道は平坦で歩きやすいです)」や「It’s a very quiet and safe neighborhood.(とても静かで安全な地域です)」といった安心感を与えるフレーズを使いましょう。夜道の明るさなど、防犯面についても一言添えると信頼度が高まります。
もし可能であれば、近隣にあるインターナショナルスクールや、英語が通じる施設を事前にリサーチしておくと、提案の幅が広がります。物件そのものだけでなく、そこでの「暮らし」をイメージしてもらえるような情報提供を心がけましょう。

日本の不動産賃貸における「敷金・礼金」や「保証人制度」は、海外の人にとって理解しにくい独自の文化です。ここを曖昧にするとトラブルの元になるため、しっかりと英語で説明しましょう。
「敷金(Shikikin)」は「Security Deposit」と訳します。「It is used for cleaning or repairs when you move out.(退去時の清掃や修理に使われます)」と説明し、基本的には残金が返ってくる性質のものであることを伝えます。これにより、多額の支払金への抵抗感を和らげることができます。
一方、日本独特の「礼金(Reikin)」は「Key Money」と呼ばれますが、これには「Non-refundable gratitude payment to the landlord(大家さんへの返礼金で返金されないもの)」という説明が必要です。海外にはない文化なので、「It’s a traditional Japanese business custom.(日本の伝統的な商習慣です)」と割り切って説明するのが最も納得感を得やすいです。
最近では「敷金礼金ゼロ」の物件も増えているため、「Zero initial deposit and zero key money options are also available.(敷金礼金ゼロの選択肢もあります)」と提案してあげると、予算を抑えたいお客さまには非常に喜ばれます。
日本で部屋を借りる際の最大の関門が「保証人(Guarantor)」です。日本人の親族がいない外国人客にとって、連帯保証人を立てるのは極めて困難です。そのため、現在は「保証会社(Guarantor Company)」の利用が一般的であることを説明する必要があります。
「Since it might be difficult to find a Japanese guarantor, you can use a guarantor company for a fee.(日本人の保証人を見つけるのは難しいかもしれないので、有料で保証会社を利用できます)」と伝えます。保証料(Guarantee fee)が初回に入居費用の50%〜100%程度かかること、更新時にも費用が発生することも併せて説明しましょう。
また、審査(Screening)についても触れておく必要があります。「The landlord and the guarantor company will conduct a screening process.(大家さんと保証会社が審査を行います)」と伝え、パスポートや在留カード、雇用契約書が必要になることを早めにアナウンスしておきましょう。
審査で必要になる書類の英語名
・Residence Card(在留カード)
・Passport(パスポート)
・Employment Contract(雇用契約書)
・Certificate of Eligibility(在留資格認定証明書)
日本の賃貸契約は通常2年間(2-year contract)であり、更新時には「更新料(Renewal fee)」がかかることが一般的です。これは英語で「Contract Renewal Fee」と呼びます。「Every two years, you usually need to pay one month's rent to renew the contract.(2年ごとに、通常は家賃1ヶ月分の更新料を支払う必要があります)」と説明します。
海外では自動更新で費用がかからない国も多いため、この更新料についても驚かれることが多いです。契約を結ぶ前にあらかじめ伝えておくことで、2年後のトラブルを防ぐことができます。また、火災保険(Fire insurance)への加入が必須であることも忘れずに伝えましょう。
「Insurance is mandatory to protect you in case of fire or water damage.(火災や漏水に備えて、保険への加入は必須です)」と説明すれば、必要性を理解してもらえます。これらの諸費用を合算した「初期費用(Initial cost)」の概算を早めに提示することが、案内の成否を分けます。
案内が成功して入居が決まっても、生活ルールの違いから近隣トラブルに発展するケースがあります。不動産仲介担当者として、事前に基本的なマナーを英語でレクチャーしておくことが、長期的な顧客満足につながります。
日本のゴミ出しルールは世界でも類を見ないほど細かく、外国人居住者が最も苦労するポイントです。単に「ゴミを捨ててください」ではなく、「Sorting garbage is very strict in Japan.(日本ではゴミの分別が非常に厳しいです)」と前置きして説明しましょう。
「Combustible garbage(燃えるゴミ)」「Incombustible garbage(燃えないゴミ)」「Recyclables(資源ゴミ)」の分類を、自治体が配布している英語のパンフレットを使いながら説明します。また、収集日(Collection days)と時間(By 8:00 AMなど)、場所についても具体的に示します。
粗大ゴミ(Bulky items)については、勝手に捨ててはいけないことを強調してください。「You need to make a reservation and pay a fee to dispose of large items.(大型ゴミを捨てるには予約と費用が必要です)」と伝えることで、不法投棄によるクレームを未然に防ぐことができます。
日本の住宅、特にアパートやマンションは壁が薄いことが多く、騒音トラブルが発生しやすいことを伝える必要があります。「Japanese apartments are often close together, so please be mindful of noise.(日本の住宅は密集しているため、騒音には注意してください)」とアドバイスします。
特に「At night and early in the morning, please keep the volume of your music or TV low.(夜間や早朝は、音楽やテレビの音量を下げてください)」といった具体的な行動指針を伝えると効果的です。また、友人を招いてパーティーを開く習慣がある文化圏の人には、日本での集合住宅ではそれが一般的ではないことを丁寧に伝えることも重要です。
「Walking loudly or dropping things can also cause noise complaints.(足音を大きく立てたり、物を落としたりすることも騒音苦情の原因になります)」と伝え、スリッパの着用やカーペットの使用を勧めるのも良い方法です。相手のライフスタイルを否定せず、日本の住環境の特性を伝えるスタンスを保ちましょう。
入居時に必ず伝えておくべきなのが、退去時の「原状回復(Restoring the room to its original state)」についてです。これを理解していないと、退去時に敷金が戻らないことで大きなトラブルになります。「You must return the room in the same condition as when you moved in.(入居時と同じ状態で部屋を返さなければなりません)」とはっきり伝えましょう。
特に壁の穴(holes in the wall)や床の傷(scratches on the floor)、タバコの匂いや汚れなどは、多額の修繕費用が発生することを警告しておきます。「Avoid using nails or strong tape on the walls.(壁に釘や強いテープを使わないでください)」といった具体的なアドバイスを添えましょう。
また、日本では「退去の1ヶ月前まで(1 month notice)」に解約の連絡をするのが一般的であることを説明します。「If you want to move out, you must notify the landlord at least one month in advance.(退去する場合は、少なくとも1ヶ月前に大家さんに通知する必要があります)」というルールは、海外とは期間が異なる場合があるため、重要事項として伝えます。
生活ルールの案内をスムーズにするコツ
・多言語対応の「入居ガイドブック」を渡す
・スマートフォンの写真を使って、具体的なダメな例を見せる
・「困ったときはこの番号へ」とサポート窓口を明記しておく

毎回ゼロから英語で対応するのは大変です。業務の合間に準備できる工夫を取り入れることで、外国人客への対応は劇的に効率化されます。ここでは、実務に役立つ準備のコツをご紹介します。
よく紹介する物件やエリアについては、あらかじめ英語のマイソク(物件概要書)を用意しておきましょう。全ての情報を翻訳する必要はありません。家賃、管理費、初期費用の合計、駅からの距離、主要設備など、お客さまが最も知りたい項目を英語で併記するだけで十分です。
周辺地図についても、Googleマップに英語で注釈を入れたものを作成しておくと便利です。「Supermarket with English support」「Clinic with English-speaking staff」といった情報を書き込んだカスタムマップを作成し、URLをお客さまに共有するのも喜ばれるテクニックです。
このような視覚的な資料が充実していると、案内中に言葉に詰まっても「Please check this document.(この資料を確認してください)」と誘導できるため、精神的な余裕が生まれます。一度テンプレートを作ってしまえば、他の外国人客の際にも活用できる資産になります。
最新のテクノロジーを味方につけることは、現代の不動産仲介において欠かせません。例えば、スマートフォンの翻訳アプリを使って、重要事項説明書(Important Matters Explanation)のポイントをリアルタイムで読み上げたり、難しい専門用語をその場で調べたりすることができます。
また、ChatGPTなどのAIを活用して、お客さまへのメール返信案を作成するのもおすすめです。「丁寧な不動産仲介の英語で、内見のお礼メールを書いてください」と依頼すれば、自然な英文がすぐに手に入ります。これを自分なりにアレンジして使うことで、ライティングの手間を大幅に削減できます。
ただし、アプリやAIは完璧ではありません。重要な金額や日付、条件については、必ず紙に書くかチャットのテキストとして残し、お互いに齟齬がないかダブルチェックする習慣をつけましょう。「Just to make sure, let’s confirm the price.(念のため、価格を確認しましょう)」という一言が、ミスを防ぐ最大の防御策です。
結局のところ、不動産仲介で最も大切なのは「この担当者は信頼できるか」という点です。英語が完璧でなくても、誠実に物件のメリットとデメリットを伝えようとする姿勢は、必ずお客さまに伝わります。ジェスチャー(Gesture)を交えたり、笑顔で接したりすることを忘れないでください。
わからない質問をされたときは、無理にその場で答えず「Let me check and get back to you later.(確認して後ほどご連絡します)」と正直に伝えましょう。中途半端な知識で答えるよりも、正確な情報を後で伝える方が信頼度は高まります。
案内の最後には「Do you have any questions or concerns?(何か質問や不安な点はありますか?)」と聞き、お客さまの心のモヤモヤを解消する時間を設けます。こうした小さな積み重ねが、「この人から借りたい」という成約への決め手となります。英語はあくまで手段であり、目的はお客さまの新しい生活をサポートすることであることを忘れないでください。

不動産仲介で外国人客を案内する際は、英語のスキルもさることながら、相手の文化や不安を理解し、日本の独特な慣習を論理的に説明する姿勢が何より重要です。今回ご紹介したフレーズや説明のコツを活用すれば、英語での接客に対する心理的ハードルは大幅に下がるはずです。
まずは基本的な不動産用語を英語で言えるようにし、内見案内の流れに沿ったフレーズをいくつか丸暗記することから始めてみてください。完璧な発音や文法よりも、はっきりと、そして誠実に伝えることが成約への近道です。また、初期費用や保証人、ゴミ出しルールなどのトラブルになりやすいポイントを事前にしっかり説明しておくことが、自分自身を守ることにもつながります。
外国人のお客さまにとって、日本での家探しは人生の大きな転機です。その重要なプロセスをサポートするパートナーとして、英語というツールを有効に使い、信頼を勝ち取っていきましょう。一つひとつの丁寧な対応が、あなたの不動産仲介担当者としての評価を高め、より広い市場での活躍を可能にしてくれるはずです。