
日本国内の市場が縮小する中で、丹精込めて育てた農作物を海外へ届けたいと考える農家の方が増えています。しかし、海外輸出に挑戦しようとした際、最初に大きな壁として立ちはだかるのが「英語でのコミュニケーション」ではないでしょうか。特に、顔が見えない相手とのやり取りの基本となるメールは、初歩的なルールを知っているかどうかがビジネスの成否を分けます。
英語に苦手意識があっても、ポイントさえ押さえれば海外のバイヤーと対等に交渉することは十分に可能です。この記事では、英語上達方法ガイドとして、農家の方が海外輸出をスタートするために必要な英語メールの基礎知識をやさしく解説します。専門的な用語も噛み砕いてお伝えするので、英語の勉強を始めたばかりの方でも安心して読み進めていただけます。
この記事を通じて、英語メールへの心理的なハードルを下げ、世界中の食卓にあなたの農産物を届ける第一歩を踏み出しましょう。正しい知識を身につけることで、海外取引という新しい可能性が大きく広がっていくはずです。
海外輸出を検討し始めた農家の方にとって、英語でのやり取りは最も不安を感じる部分かもしれません。しかし、現在の世界市場において日本の農産物は非常に高い価値を持っています。ここでは、輸出に取り組む意義と、英語メールに向き合う際の基本的な考え方について整理していきましょう。
現在、日本のイチゴやシャインマスカット、和牛といった農産物は、アジア圏を中心に「高級ブランド」としての地位を確立しています。特に甘さや見た目の美しさ、そして食の安全に対する信頼性は世界トップクラスです。2025年以降も日本の農林水産物の輸出額は増加傾向にあり、政府も強力に後押しをしています。
国内市場では価格競争が激化していますが、海外では「高品質なものには高い対価を払う」という富裕層の需要が根強く存在します。つまり、農家自らが海外輸出のルートを持つことは、収益性の向上と経営の安定化に直結します。英語メールをマスターすることは、この巨大な市場へアクセスするための最強の武器を手に入れることを意味します。
もちろん、輸送コストや関税といった課題はありますが、直接バイヤーと繋がることで中間マージンを削り、適正な価格で取引できる可能性が高まります。海外のニーズを直接知ることで、生産する品種の選定やブランディングにも良い影響を与えるでしょう。
多くの農家の方が「正しい英文法で書かなければならない」と身構えてしまいますが、ビジネスメールで最も重要なのは「正確な情報を簡潔に伝えること」です。ネイティブスピーカーのような流暢な英語を目指す必要はありません。むしろ、難しい表現を使いすぎて意味が取りづらくなる方がリスクです。
相手のバイヤーも、あなたが農家であることを理解しています。彼らが求めているのは、華やかな英語ではなく「この農産物はいつ、どれくらいの量、いくらで供給できるのか」という事実です。主語と動詞がはっきりした、中学生レベルの短文を組み合わせるだけでも、ビジネスは十分に成立します。
また、昨今では翻訳ツールの精度が飛躍的に向上しています。自分で書いた文章をツールでチェックし、意味が通じるかどうかを確認しながら進めれば、大きな失敗は防げます。恥ずかしがらずに、まずは知っている単語を並べることから始めてみましょう。
海外取引の相手は必ずしも英語が母国語とは限りません。アジア圏のバイヤーも第2言語として英語を使っている場合が多く、お互いに「わかりやすいシンプルな英語」を心がけることがスムーズな取引のコツになります。
英語メールを送る前に、まずは自社の農産物の強みを英語で説明できるように整理しておきましょう。具体的には「栽培方法(特別栽培、オーガニックなど)」「糖度(Brix level)」「出荷可能時期(Seasonality)」といった情報です。これらをあらかじめメモしておくだけで、メール作成のスピードが格段に上がります。
また、商品の写真や農場の風景写真は、言葉以上に多くの情報を伝えてくれます。英語が不十分な部分を視覚情報で補うのは、海外ビジネスにおいて非常に有効な手段です。カタログやリーフレットのPDFを用意しておき、メールに添付できるようにしておきましょう。
さらに、輸出先の国によって植物検疫の条件が異なります。どの国に輸出したいかを絞り込み、その国で求められる条件を事前に調べておくことも欠かせません。こうした準備が整っていることをメールで伝えると、バイヤーからの信頼度が飛躍的に高まります。
現代の海外輸出において、DeepLやChatGPTといった生成AIは強力なパートナーになります。日本語をそのまま翻訳するのではなく、「短く区切った日本語」を翻訳にかけることで、誤訳の少ない自然な英文を作ることができます。翻訳された英文を再度日本語に訳して(逆翻訳)、元の意味とズレがないか確認するのが初歩的な活用法です。
ただし、ツールを過信しすぎることには注意が必要です。特に数字(数量や金額)や納期に関しては、必ず自分の目でダブルチェックを行ってください。1つゼロを間違えるだけで大きな損害に繋がる可能性があるため、重要な箇所は太字にしたり、表形式にしたりして視認性を高める工夫をしましょう。
また、海外取引では支払いに関するトラブルのリスクもゼロではありません。初回の取引では前払いをお願いする、あるいは信頼できる仲介業者を通すなど、自分を守るためのルールを決めておくことが大切です。英語でのやり取りは記録が残るため、言った・言わないのトラブルを防ぐためにも、重要な合意事項は必ずメールで文面に残しましょう。

初めてのバイヤーにメールを送る際、最も大切なのは「怪しい業者ではない」という安心感を与えることです。海外では毎日大量の営業メールが届くため、一目で内容がわかり、誠実さが伝わる構成にする必要があります。ここでは、農家の方がそのまま使えるメールの型を解説します。
件名(Subject)は、メールが開封されるかどうかを決める重要な要素です。「Hello」や「Question」といった曖昧な件名では、スパムメールと判断されて削除される恐れがあります。件名には「誰が」「何を目的としているか」を明確に含めるようにしましょう。
【良い件名の例】
Subject: High-quality Japanese Strawberry (Tochiotome) Export Inquiry - [Your Farm Name]
Subject: Fresh Apple Supply Inquiry for [Buyer's Company Name] from Japan
このように、具体的な農産物名や「Japan」というキーワードを入れることで、相手の関心を引くことができます。また、[ ]を使って自分の農園名や相手の社名を入れると、一斉送信のメールではない「あなた宛て」という特別感を出すことができます。簡潔かつ具体的に、が鉄則です。
本文の冒頭では、まず丁寧な挨拶と自己紹介を行います。その後、なぜ相手に連絡したのかという理由を伝えます。ここでは長々と書くのではなく、自分たちがどのようなこだわりを持って農業をしているのかを1?2文で情熱的に伝えるのがコツです。
例えば「私たちは30年以上、化学肥料を抑えてリンゴを育てています」といった具体的な実績は、海外バイヤーにとって非常に魅力的な情報です。「Quality over Quantity(量より質)」という姿勢を見せることで、安売り競争に巻き込まれないブランディングが可能になります。
商品の特徴を説明する際は、形容詞を使いすぎず、数字や客観的な事実に基づいた説明を心がけましょう。「Very delicious」よりも「Brix level 15+(糖度15度以上)」の方が、ビジネスの場では説得力があります。相手がその農産物を扱った際に、どのようなメリットがあるかをイメージさせる構成にしてください。
メールの最後は、返信を促す言葉と丁寧な結びで締めくくります。海外のビジネス習慣では、最後をどのように締めるかで相手に与える印象が変わります。「ご多忙の折とは存じますが」といった日本的な謙遜は不要ですが、前向きな姿勢を示すことは重要です。
よく使われるフレーズとしては「I look forward to hearing from you.(お返事を楽しみにしています)」があります。これに加えて「If you have any questions, please feel free to ask.(ご質問があればお気軽にお尋ねください)」と添えることで、コミュニケーションを歓迎する姿勢をアピールできます。
署名(Signature)には、氏名、農園名、住所、電話番号、そしてウェブサイトのURLやSNS(Instagramなど)のリンクを必ず記載しましょう。農場の写真が掲載されているSNSのアカウントがあると、相手は安心してコンタクトを取ることができます。透明性の高さが信頼の基盤になります。
一方的に情報を送るだけでは、なかなか返信はもらえません。メールの最後に、相手が答えやすい質問を1つだけ投げかけるのが、返信率を高めるテクニックです。例えば「貴社では現在、日本産の果物を扱っていますか?」といった、Yes/Noで答えられる質問から始めましょう。
相手のビジネスに関心を持っていることを示すことで、単なる売り込みではない「パートナー探し」であるというメッセージが伝わります。また、サンプル送付の希望を尋ねるのも効果的です。具体的なアクションを提案することで、商談が前に進む可能性がぐっと高まります。
もし返信がなくても、一度で諦める必要はありません。海外では多忙のために見落とされているケースも多いので、1週間ほど経ってから「以前送ったメールをご確認いただけましたでしょうか?」と丁寧なリマインドを送ることも、海外輸出においては一般的な初歩のプロセスです。

メールのやり取りが始まったら、具体的な商談に入ります。農家の方が海外輸出の実務でよく遭遇するシチュエーションごとに、覚えておくと便利な英単語やフレーズをご紹介します。これらをテンプレート化しておけば、返信のたびに悩む時間が大幅に短縮されます。
生鮮食品の取引において、サンプルの確認は避けて通れません。味、食感、輸送中の傷み具合などを確認してもらうために、積極的に提案しましょう。サンプルを送る際は、送料をどちらが負担するか(通常はバイヤー負担が多いですが、戦略的に農家が持つこともあります)を明確にする必要があります。
・We would like to send you some samples of our grapes.
(私たちのブドウのサンプルをお送りしたいと考えています。)
・Please let us know your shipping address and contact number.
(配送先の住所と電話番号を教えてください。)
・The samples are free, but could you cover the shipping cost?
(サンプルは無料ですが、送料をご負担いただけますか?)
サンプルを送る際は、追跡番号(Tracking Number)を必ず伝えましょう。生鮮品は鮮度が命ですので、いつ届くのかを相手が把握できるようにしておくのがマナーです。到着後には「How was the quality?(品質はいかがでしたか?)」と感想を聞くフォローアップも忘れずに行いましょう。
農産物の特徴を正確に伝えるためには、専門的な英単語を知っておく必要があります。すべてを覚える必要はありませんが、自分の作物を説明する際に必要な単語を選んでリスト化しておくと便利です。
| 日本語 | 英語 | 解説 |
|---|---|---|
| 無農薬栽培 | Pesticide-free cultivation | 農薬を使用せずに育てたことを指します。 |
| 有機栽培 | Organic farming | 公的な認証を受けている場合に使われます。 |
| 糖度 | Brix level | 果物の甘さを示す指標として世界共通で使われます。 |
| 旬・シーズン | In season | 最も品質が良く、出荷可能な時期のことです。 |
| 賞味期限 | Shelf life | 店頭で販売可能な期間。輸出では非常に重視されます。 |
| 選果・等級 | Grading | サイズや見た目によるランク分けを指します。 |
これらの単語をメールの中で使う際は、補足説明を添えると親切です。例えば「Brix level 15, which is very sweet(糖度15度で、とても甘いです)」のように、数字だけでなく感覚的な言葉も添えるとバイヤーがイメージしやすくなります。
価格交渉は最も神経を使う場面ですが、ここでもストレートかつ丁寧な表現が求められます。自分の希望価格を伝えるだけでなく、なぜその価格なのかという根拠(栽培の手間や資材の高騰など)を添えるのが、納得感を得るための初歩的なテクニックです。
「Our price is 〇〇 yen per kg.(当方の価格は1kgあたり〇〇円です)」とはっきり提示しましょう。もし相手から値下げを要求された場合は「We can offer a 5% discount for orders over 500kg.(500kg以上の注文であれば5%引きできます)」のように、数量に応じた条件を提示するのが一般的です。
安易に値下げに応じると「その程度の価値しかない」と思われてしまうこともあります。価格を守るためには「To maintain high quality, this is our best price.(高品質を維持するため、これが最善の価格です)」と、品質を理由に交渉を進めることも必要です。妥協点を探りながら、お互いが納得できる落とし所を見つけましょう。
お金に関するトラブルを防ぐためには、支払い条件(Payment Terms)を明確に決めておくことが不可欠です。小規模な農家が初めて海外輸出を行う場合、「100% Advance Payment(100%前払い)」を条件にすることが最も安全です。発送前にお金が振り込まれるのを確認してから商品を送る形式です。
「Our payment term is 100% T/T in advance.(当方の支払い条件は電信送金による100%前払いです)」というフレーズを覚えておきましょう。「T/T」とは銀行振込のことで、国際取引で最も一般的な方法の一つです。手数料がかかるため、どちらが負担するかも決めておくとスムーズです。
また、PayPalなどのオンライン決済サービスを利用できると、少額取引やサンプル送付時の利便性が高まります。支払い方法を複数提示することで、相手の利便性を考えた対応ができるようになります。条件に合意したら、必ずメールで「Confirmed(承知しました)」とエビデンスを残してください。
商談が進み、見積書の作成やスケジュールの調整に入ると、より事務的かつ正確な英語メールが必要になります。ここでは、貿易実務の初歩的なルールに基づいた、見積もりと納期の伝え方を解説します。ここを疎かにすると、後々の大きなトラブルに繋がりかねません。
貿易には「インコタームズ(Incoterms)」と呼ばれる、どこまでの費用と責任をどちらが負担するかという世界共通のルールがあります。見積もりを出す際は、単に価格だけでなく、この条件を必ず記載しなければなりません。農家が最初によく使うのは「EXW」や「FOB」です。
「EXW(Ex Works)」は工場(農園)渡しで、送料や関税はすべてバイヤー持ちです。農家にとっては最もリスクが低い条件です。「FOB(Free on Board)」は、港や空港までの配送費用を農家が持ち、船や飛行機に乗せた後の責任はバイヤーが持つという条件です。どちらの条件で提示しているのかをメールで明記しましょう。
【見積もり記載の例】
Price: 1,500 JPY / box (EXW Farm)
Currency: Japanese Yen
Validity: Valid for 30 days
※見積もりの有効期限(Validity)を書くのを忘れないでください。為替やコストの変動に対応するためです。
専門用語に不安がある場合は「The price includes shipping up to Tokyo port.(価格には東京港までの送料が含まれています)」のように、普通の英語で具体的に説明を添えれば、相手との認識のズレを防ぐことができます。
農産物は工業製品とは異なり、天候や収穫状況によって出荷時期が左右されます。そのため、納期を伝える際は「〇月〇日」とピンポイントで指定するよりも、一定の幅を持たせて伝えるのが現実的です。注文を受けてから発送までにかかる時間(リードタイム)も正確に伝えましょう。
「We can ship within 3 days after receiving the order.(注文を受けてから3日以内に発送可能です)」や「Harvesting starts in early October.(収穫は10月初旬に始まります)」といった表現を使います。台風などの天候不良で遅延が予想される場合は、分かった時点で早めに連絡することが信頼を守ることに繋がります。
また、海外輸送には時間がかかることをバイヤーに再認識してもらうことも大切です。航空便なら数日ですが、船便なら数週間かかります。「Estimated arrival date is October 20th.(到着予定日は10月20日です)」のように、予定(Estimated)であることを強調して伝えると、不測の事態にも対応しやすくなります。
農産物の品質を保つためには、どのように梱包されているか、どのような温度で輸送すべきかという情報が非常に重要です。特に海外へ送る場合、荷扱いは日本国内ほど丁寧ではないことを前提に、頑丈な梱包が必要になります。その詳細を英語で伝えましょう。
「Packed in 5kg cartons with cushions.(クッション材を入れた5kg入りの段ボールに梱包します)」や「Keep refrigerated at 5 degrees Celsius.(摂氏5度で冷蔵保管してください)」といった具体的な指示をメールに含めます。これにより、輸送中や倉庫保管中の劣化を防ぐことができます。
写真で梱包状態を見せるのも効果的です。「Here are some photos of the packaging.(こちらが梱包の写真です)」と添えて、バイヤーに安心感を与えましょう。適切な管理がなされていないと、到着時に品質が低下し、クレームや返品の原因になるため、このステップは非常に重要です。
輸出業務では、どれだけ注意していても予期せぬトラブルが起こり得ます。それを未然に防ぐ、あるいは最小限に抑えるためには、こまめな確認メール(Confirmation Mail)が欠かせません。合意した内容を箇条書きにして送り、相手に「Yes, correct.」と言わせるプロセスを挟みましょう。
「Just to confirm, here are the details of your order.(確認ですが、こちらがご注文の詳細です)」と始め、品名、数量、単価、合計金額、支払い条件、配送先、予定日を並べます。一見手間に思えますが、この一通があるだけで、後からのキャンセルや内容の食い違いを劇的に減らすことができます。
もし相手から返信が遅い、あるいは内容が曖昧な場合は「Please confirm if this is correct. We cannot process the shipment without your confirmation.(これが正しいか確認してください。確認がないと発送の手続きができません)」と、少し強めに促すことも時には必要です。お互いの責任範囲を明確にすることが、健全な国際取引の第一歩です。

日々の農作業で忙しい農家の方にとって、英語学習に何時間も費やすのは現実的ではありません。しかし、現在はテクノロジーを活用することで、学習時間を最小限に抑えつつ、質の高い英語メールをやり取りできる環境が整っています。ここでは、効率を最大化するための初歩的な工夫をご紹介します。
2026年現在、ChatGPTなどのAIツールは農家の強い味方になっています。単なる翻訳機として使うのではなく「農家として海外バイヤーに送る丁寧な返信メールを書いて」と役割を指定することで、より状況に即した英文を生成してくれます。日本語で「伝えたい要点」を箇条書きにして入力するのが最も効率的です。
また、自分が書いた英文が失礼ではないか、文法的に間違っていないかをチェックしてもらう使い方もおすすめです。「Please check this email for grammar and politeness.(このメールの文法と丁寧さをチェックしてください)」と指示を出せば、即座に修正案を提示してくれます。
ただし、AIが作った文章をそのまま送るのではなく、必ず自分が理解できるレベルの言葉に調整しましょう。あまりに高度な英語を送りすぎると、その後の交渉でも同じレベルの英語力を期待されてしまい、自分の首を絞めることになりかねません。等身大の言葉でやり取りすることが、長く取引を続けるコツです。
DeepLなどの翻訳ソフトは非常に優秀ですが、日本語特有の主語がない文章や、曖昧な表現は誤訳を招きやすいです。これを防ぐための最も確実な方法が「逆翻訳」です。一度日本語から英語に訳した文章を、再度ソフトに読み込ませて日本語に戻してみましょう。
戻ってきた日本語が、自分が伝えたかった意味と大きくかけ離れていれば、元の日本語を修正する必要があります。「リンゴを送ります」ではなく「私はあなたに、リンゴを10ケース送ります」のように、主語と目的語、そして具体的な数字を明確にした日本語を入力することが、正確な翻訳を引き出すポイントです。
特に「大丈夫です(Yesの意味かNoの意味か)」や「前向きに検討します(期待して良いのか)」といった日本的な曖昧な表現は、翻訳ソフトも混乱します。YESなのかNOなのか、いつまでにやるのかをはっきりさせた、ロジカルな日本語を書く習慣を身につけましょう。これは英語メールの上達だけでなく、ビジネス全般のスキルアップにも繋がります。
英語メールは、実は同じようなフレーズの繰り返しであることが多いです。挨拶、見積もりの提示、発送の連絡、お礼など、よく使う文章を「メールテンプレート」としてパソコンやスマホに保存しておきましょう。農家向けに特化した自分専用のフレーズ集を作れば、作成時間は10分の1になります。
例えば、季節の挨拶であれば「Now is the harvest season for our strawberries.(今、私たちのイチゴの収穫期を迎えました)」といった一文を定型化しておきます。これに最新の糖度や出荷量を書き加えるだけで、立派な営業メールが完成します。テンプレート化することで、誤字脱字の防止にも役立ちます。
スマホのメモ帳や辞書登録機能を活用するのもおすすめです。例えば「めーる」と打てば、メールの署名や定型の挨拶が出るようにしておくと、作業の合間にスマホからパッと返信できるようになります。スピード感のある対応は、海外バイヤーからの信頼を勝ち取るための大きな要素です。
机に向かって勉強する時間がなくても、農作業中や移動中に英語に触れることは可能です。おすすめは、自分の農作物を説明する「30秒スピーチ」を英語で作ってみることです。メールでよく使うフレーズを声に出して練習することで、単語が記憶に定着しやすくなります。
また、海外の農業ニュースやライバルとなる他国の農家のウェブサイトを眺めるのも勉強になります。彼らがどのような単語を使って自分たちの商品をアピールしているかを見ることで、生のビジネス英語を学ぶことができます。「Crunchy(シャリシャリした)」「Juicy(瑞々しい)」といった、食感を表すボキャブラリーを増やすと、メールの表現がより豊かになります。
最後は、完璧を求めずに「通じれば勝ち」という精神で、どんどんメールを送ることです。実際のやり取りの中で、バイヤーが使ってきた表現を真似して自分のものにするのが、最も効率的な学習法です。実践こそが、英語上達への一番の近道であることを忘れないでください。

この記事では、農家の方が海外輸出を始めるための英語メールの初歩について、心構えから具体的な実務、効率化のコツまで幅広く解説してきました。英語はあくまで自分の農産物を世界に届けるための道具であり、それ自体を完璧にマスターする必要はありません。大切なのは、正確な情報を誠実に伝える姿勢です。
まずは、自社の商品の強みを整理し、一通のコンタクトメールを送ることからすべてが始まります。件名の付け方や構成のルールを守れば、バイヤーにあなたの熱意はきっと伝わります。商談中も、インコタームズや支払い条件といった基本をしっかり押さえておけば、大きなトラブルを回避して安全な取引を行うことができます。
現在は便利な翻訳ツールやAIも手軽に利用できる時代です。これらを賢く活用して、まずは定型文のやり取りから慣れていきましょう。海外の食卓であなたの農産物が喜ばれる姿を想像しながら、少しずつ英語でのコミュニケーションを楽しんでみてください。日々の積み重ねが、やがてあなたの農園を世界のブランドへと成長させる力になるはずです。