TOEICのリスニングセクションで、多くの受験者が直面する高い壁が「先読み」です。問題が流れる前に設問や選択肢に目を通しておくテクニックですが、実際には「読むのが遅くて間に合わない」「先読みをしようとすると音声が頭に入らなくなる」と悩む方が少なくありません。
ネット上の攻略法では「先読みは必須」と言われることが多いため、それができない自分はスコアが伸びないのではないかと諦めてしまう方もいるでしょう。しかし、結論から言えば、先読みが完璧にできなくてもスコアを上げる方法は存在します。
この記事では、TOEICリスニングの先読みができない原因を分析し、諦める前に試してほしい具体的な代替案や、無理のない範囲で先読みを取り入れる練習法を分かりやすく解説します。自分に合ったスタイルを見つけて、リスニングの苦手意識を克服しましょう。
リスニングの先読みがうまくいかないのには、いくつかの明確な理由があります。まずは、なぜ自分が「できない」と感じてしまうのか、その正体を確認してみましょう。原因を特定することで、次のステップが見えてきます。
先読みができない最大の理由は、単純に「読む速さ」が足りていないことです。TOEICのPart 3やPart 4では、1つの音声に対して3つの設問があります。音声が流れる前のわずか数秒から十数秒の間に、これらを正確に読み取るには、かなり高い速読力が求められます。
多くの日本人の英語学習者は、英文を頭の中で日本語に訳しながら読んでしまう「返り読み」の癖があります。この読み方では、TOEICのタイトな時間制限の中で先読みを完結させることは非常に困難です。読み終わる前に音声が始まってしまい、焦りが生じる悪循環に陥ります。
また、語彙力が不足していると、選択肢の中の単語でつまずいてしまい、そこで思考が停止してしまいます。読むスピードが遅いと、先読みという高度な技術を使いこなすための土台が整っていない状態と言えるでしょう。まずは英文を左から右へ、見たまま理解するトレーニングが必要です。
先読みを無理にやろうとすると、音声が流れている最中にも設問を見てしまい、結果としてリスニング内容が頭に入ってこないという現象が起こります。これは人間の脳が、高度な情報の「聴き取り」と「読解」を同時に行うのが難しいためです。
特にリスニングに余裕がない段階で先読みを強行すると、意識が「文字」の方に向きすぎてしまいます。すると、肝心の音声が「ただの雑音」として通り過ぎてしまい、内容を全く把握できなくなります。これが「先読みをしたら余計に解けなくなった」と感じる原因です。
マルチタスクが得意な人もいますが、多くの人にとってリスニング中の読解は脳への負荷が大きすぎます。先読みにこだわりすぎるあまり、本来のリスニング能力を発揮できなくなっているケースは非常に多いのです。この場合は、無理に読もうとせず、まずは聴くことに集中する勇気を持つことが大切です。
TOEICのリスニングは、一定のリズムで進んでいきます。一度でも先読みが間に合わなくなると、その遅れが次の問題、さらにその次の問題へと波及してしまいます。一つの設問に固執してしまい、次の問題の先読み時間を削ってしまうことが原因です。
「前の問題の答えが分からないから、選択肢をじっくり読み直したい」という心理が働くと、リズムは一気に崩れます。その結果、次の問題の先読みができなくなり、「もうダメだ、諦めよう」という絶望感につながります。完璧主義の人ほど、このリズムの崩れに弱い傾向があります。
テスト全体の流れを管理できず、場当たり的に対応していると、後半のPart 4に到達する頃には精神的にも疲れ果ててしまいます。先読みはあくまで手段であり、目的ではありません。リズムを維持することを優先し、「できなかったら捨てる」という割り切りができないことも、挫折の大きな要因です。
先読みでよくある失敗パターン
・設問を全部読もうとして、1つ目の途中で音声が始まる
・音声が流れているのに選択肢を凝視してしまい、内容を聞き逃す
・わからない問題で悩みすぎて、次の問題の先読み時間がゼロになる
もしどうしても先読みができないのであれば、いっそのこと「先読みを最低限にする」あるいは「先読みをしない」という戦略に切り替えるのも一つの手です。無理な手法に固執するより、自分にできる最大限のパフォーマンスを出す方法を考えましょう。
全ての設問と選択肢を読もうとするから、時間が足りなくなるのです。それならば、各設問の「1番目のクエスチョン(設問文)」だけを読むようにしましょう。これなら3?5秒もあれば確認できます。これだけでも、これから流れる音声の「主題」や「場面」を推測するヒントになります。
選択肢まで読もうとせず、例えば「Where does the conversation take place?(どこでの会話か)」という問いだけを頭に入れておきます。これだけで、耳が勝手に場所を表す単語(office, airport, restaurantなど)を探そうとしてくれるため、聴き取りの精度が上がります。
この「1行集中型」のメリットは、脳への負荷を最小限に抑えつつ、音声の導入部分をスムーズに受け入れられる点にあります。全部読まなければならないというプレッシャーから解放され、リラックスして音声に集中できるようになります。まずはここから始めて、余裕があれば2つ目の設問に進むという段階的なアプローチが有効です。
先読みをしない分、耳から入ってくる情報だけで頭の中に映像を浮かべるトレーニングを行います。TOEICの音声は、必ず具体的なシチュエーションがあります。「誰が、どこで、何のために、誰に対して」話しているのかを、リアルタイムでイメージ化する練習をしてください。
文字情報に頼るのではなく、音声が語るストーリーをそのまま理解する能力を高めれば、先読みは必須ではなくなります。音声が終了した後に設問を読み、その記憶から答えるスタイルです。これを成功させるには、高い「リテンション能力(記憶保持力)」が必要になります。
リテンション能力を高めるには、普段の学習でシャドーイングや暗唱を取り入れるのが効果的です。音声が終わった瞬間に「どんな内容だった?」と自分に問いかけ、日本語で要約してみてください。これがスムーズにできるようになれば、先読みなしでも正答率を安定させることが可能です。
TOEICには、毎回決まって出題される「定番の設問」が数多く存在します。例えば、冒頭で「目的」を問うもの、中盤で「具体的な問題点」を問うもの、終盤で「次にすべき行動」を問うもの、といった具合です。この流れをあらかじめ理解していれば、先読みしなくても予測が立ちます。
「先読みができない」と悩む人の多くは、音声の内容を予測できていません。しかし、トレーニングを積めば、「こういう状況なら次はこう展開するだろう」という推論ができるようになります。ビジネスシーンの常識的な展開(注文ミス、会議の遅れ、機器の故障など)をパターン化して覚えることが近道です。
問題集を解く際、あえて設問を見ずに音声を聴き、自分で「どんな質問が来るか」を予想する練習をしてみてください。この推測力が身につくと、音声の中の重要なキーワードが浮き彫りになって聞こえるようになります。予測力は、読解速度を補って余りある武器になります。
先読みしない派のメリット
・音声の細部までじっくり聴くことができる
・「先読みしなきゃ」という焦りや不安から解放される
・文字に頼らない「真のリスニング力」が身につく
スコア800点以上を目指す高得点層にとっては、やはり先読みは強力な武器となります。今はできなくて諦めかけている方も、やり方を変えれば少しずつできるようになります。一気にやろうとせず、小さなステップに分けて練習してみましょう。
設問の文章を最初から最後まで丁寧に読む必要はありません。重要な単語、つまり「キーワード」だけをパッと目に焼き付ける「スキャニング」の技術を磨きましょう。名詞や動詞、疑問詞に注目するだけで十分です。
例えば、「What is the problem with the laptop?」という設問があれば、「What」「problem」「laptop」の3語だけを視界に入れます。選択肢も同様で、長い文章を読まずに、特徴的な単語(price, battery, screenなど)だけをチェックします。これなら1問につき1?2秒で済みます。
この練習には、公式問題集のリスニングセクションのページを使い、タイマーで30秒測って何問分のキーワードを拾えるかゲーム感覚で取り組むのがおすすめです。指でなぞりながら視線を動かすことで、情報の取捨選択が驚くほど速くなります。
先読みができない人は、何を聴き取ればいいのか混乱しています。それを防ぐために、模試などの練習段階では、設問の疑問詞(Who, Where, Whyなど)と、誰について問われているのかという主語に印をつける練習をしてください。本番では書き込み禁止ですが、練習で視覚的に意識づけることが大切です。
「誰が」「何をするのか」が分かっているだけで、リスニング中の迷いが大幅に減ります。特にPart 3の会話では、男性の発言に注目すべきか、女性の発言に注目すべきかを知っているだけで、聴くべきポイントが半分に絞られます。これにより、脳の処理能力を温存できます。
普段から「問いの核心」を見抜く訓練をしておくと、本番でも無意識に目が重要な箇所へ飛ぶようになります。まずは一文を細かく分析するのではなく、「何を問われているのか」という大枠を瞬時に掴むことに集中しましょう。
先読みができるかどうかは、物理的なスピード(WPM:1分間に読める単語数)に依存します。TOEICのリスニング音声は、一般的にWPM 150?180程度です。先読みを余裕を持って行うには、これ以上の速さで黙読できる必要があります。自分の現在のスピードを知り、足りない分を補う計画を立てましょう。
もし読むスピードが極端に遅い場合は、リスニング対策よりも先に「精読」と「多読」を並行して行い、英文への慣れを作るべきです。基礎的なリーディング力が上がれば、比例してリスニングの先読みも楽になります。先読みはあくまでリーディングスキルの一部であることを忘れないでください。
練習方法としては、簡単な英文を1分間全力で読み、何語読めたかを記録します。これを毎日繰り返すだけで、脳の回転が速くなり、TOEICの設問文が驚くほど短く感じられるようになります。「速く読むための筋肉」を鍛えることが、先読みマスターへの近道です。
WPMの目安と学習指針
・WPM 100以下:まずは単語と文法を固め、返り読みをなくす
・WPM 120程度:キーワードのスキャニングを練習し始める
・WPM 150以上:本格的な先読みが可能になる段階
TOEICのリスニングは、パートごとに特徴が異なります。先読みが苦手な人でも、パートに合わせた戦術を身につければ、大崩れすることはありません。ここでは、特に苦戦しやすいPart 3とPart 4に焦点を当てて解説します。
Part 3は複数の人物による会話です。設問が「What does the man suggest?」であれば、男性の発言の直後に答えがある可能性が高いです。先読みが間に合わなくても、会話が始まったら「今は誰が喋っているか」に意識を集中させましょう。会話のキャッチボールのリズムに乗ることが重要です。
答えのヒントは会話の中に順番に出てくることが多いという特徴もあります。1つ目の設問が分からなくても、切り替えて2つ目の答えを探し始める潔さを持ちましょう。全部を完璧に正解しようとせず、確実に取れる箇所を拾っていくスタイルが、トータルのスコアを安定させます。
また、会話特有の表現(Actually, However, I'm afraid that...など)が聞こえた後は、重要な情報が続くサインです。これらを「耳のマーカー」として活用すれば、文字情報を事前に読み込んでいなくても正答に辿り着けます。
Part 4は一人によるナレーションです。スピーチ、アナウンス、電話のメッセージなど、形式が決まっています。例えば、空港のアナウンスなら「遅延の知らせ」や「搭乗ゲートの変更」がテーマになることがほとんどです。この「お決まりのパターン」を熟知しておけば、先読みなしでも内容が予想できます。
音声が始まる前のインストラクション(説明文)が流れている間に、できるだけそのナレーションの「種類」だけでも確認しておきましょう。「Questions 71 through 73 refer to the following advertisement.」という一言で、広告であることが分かります。これだけで、価格や割引、特典についての話が出ると予測がつきます。
話の構造は「導入・詳細・結び」の3段構成が基本です。1問目は導入部、2問目は詳細、3問目は結び(今後の指示など)に答えがあるのが一般的です。この「答えの出る位置」を予測するだけで、先読みができない焦りをカバーできます。
Part 3やPart 4の後半には、図表を見ながら解く問題があります。これこそが、先読みが苦手な人が最もパニックになるポイントです。図表問題の場合、設問を読むことよりも「図表のタイトルと軸」を確認することを最優先にしてください。
図表の中に書かれている数字や名前そのものが答えになることは稀で、それと対になっている情報を聴き取らせるのがTOEICの常套手段です。例えば、地図なら「どこの隣か」、リストなら「どのカテゴリーか」を把握しておく必要があります。設問文よりも、図表の構造をパッと理解することに力を入れましょう。
もし設問も図表もチェックしきれなかった場合は、迷わずその問題は「適当にマークして次に行く」決断をしてください。図表問題は配点が高いわけではありません。ここで時間を失い、次の大問のリスニングを疎かにするのが最大のリスクです。捨て問題を戦略的に作るのも立派なテクニックです。
| パート | 先読みの最低限ライン | 聴き取りのコツ |
|---|---|---|
| Part 3 | 設問1の疑問詞のみ | 話者の交代に敏感になる |
| Part 4 | ナレーションの種類を確認 | 話の展開(起承転結)を追う |
| 図表問題 | 図のタイトルと項目名 | 表にない関連情報を探す |
技術的なスキル以上に重要なのが、試験中のメンタル管理です。「先読みができなかったからもう終わりだ」というネガティブな思考は、リスニング力を著しく低下させます。プレッシャーをうまく受け流し、今の実力を100%出し切るための心の持ち方を学びましょう。
TOEICは満点を取るための試験ではなく、今の自分の実力を測定するためのものです。先読みが完璧にこなせるのは、上級者の中でも一部の人だけです。最初から「完璧に先読みしよう」と思わず、「一つでもキーワードが見えたらラッキー」くらいの気楽な気持ちで臨みましょう。
自分に厳しすぎると、ミスをした時に立ち直るのが難しくなります。1問聴き逃しても、「はい、次!」「忘れた!」と心の中で切り替える練習をしてください。リスニングは一度流れたら終わりです。過去に執着せず、今流れている音、これから来る設問だけを見るようにします。
試験中に「できない、どうしよう」と考え始めると、その思考自体が脳のメモリを消費してしまいます。思考を止めて、反射的に音に反応する状態を作るのが理想です。自分を追い込みすぎず、良い意味での「開き直り」を持つことが、結果としてスコアアップにつながります。
Part 3とPart 4は全部で20セット以上の音声があります。これをノンストップで先読みし続けようとすれば、集中力が切れるのは当然です。もし疲れて先読みが追いつかなくなったら、あえて1セット分だけ先読みを完全に捨てて、深呼吸をする時間に充てるのも有効な戦略です。
無理をしてボロボロの状態を続けるより、1回分を犠牲にしてリフレッシュした方が、残りの問題の正答率は上がります。これを「戦略的スキップ」と呼びます。全部を拾おうとして全滅するより、確実に取れる問題を増やす方が、スコアは伸びやすいのです。
ただし、解答用紙をずらさないようにだけは注意してください。マークを一旦止めることで、脳が「聴くモード」にリセットされます。疲れを感じたら、目を閉じて音声だけに耳を傾ける時間を作ってみてください。その勇気ある一歩が、後半の粘りを生みます。
リスニングセクションで最も大切なのは、自分にとって心地よいリズムを見つけることです。先読み、リスニング、解答、次の先読みというサイクルを、どれくらいの比重で行うか、あらかじめ決めておきましょう。他人のやり方を無理に真似する必要はありません。
例えば、「解答は5秒で終わらせて、次の先読みに10秒使う」というルールを自分の中で作っておきます。もし解答に5秒以上かかりそうなら、その時点で一番正解に近いと思うものにマークして、強制的に次の問題へ意識を移します。この自分ルールを守ることが、パニックを防ぐ防波堤になります。
練習の段階から、タイマーを使ってこのリズムを体に叩き込んでください。リズムが一定であれば、脳は予測可能な状態になり、ストレスが軽減されます。「自分のペースで解いている」という感覚こそが、高スコアを引き寄せる秘訣です。
試験中のメンタル維持のヒント
・前の問題が分からなくても、マークだけしてすぐに忘れる
・音声の合間に軽く背筋を伸ばし、酸素を取り入れる
・「自分だけじゃない、みんな苦戦している」と言い聞かせる
TOEICリスニングの先読みは、あくまでスコアを効率的に取るためのテクニックの一つに過ぎません。先読みができないからといって、リスニング学習そのものを諦める必要は全くありません。読解スピードやマルチタスクの能力には個人差があるため、自分に合った「情報の取り方」を見つけることが大切です。
まずは、キーワードだけを拾うスキャニングや、設問の1行目だけを見る「ミニマム先読み」から始めてみてください。文字情報に頼るのが苦痛なら、音声内容のイメージ化に全神経を集中させる戦略でも、十分に戦えます。大事なのは、完璧を目指してパニックになるのではなく、常に「今できる最善」を尽くすことです。
また、先読みの根底にあるのはリーディング力です。基礎的な読むスピードを上げることで、自然と先読みも楽になっていきます。一歩ずつ着実に英語力を高め、自分なりのリズムで試験に挑んでください。諦めずに継続した先に、必ず目標スコアへの道が開けます。