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英語でのプレゼンテーションにおいて、最も緊張する瞬間は「質疑応答」ではないでしょうか。発表内容を準備して丸暗記することはできても、予期せぬ質問に対してその場で英語を組み立てて回答するのは、非常に高いハードルに感じられるものです。
実は、英語が堪能な人でも、すべての質問に完璧に答えているわけではありません。大切なのは、答えに窮した際の上手な「逃げ方」を知っておくことです。ここで言う「逃げ方」とは、決して責任を放棄することではなく、会話を止めずにプロフェッショナルな対応を続けるための戦略的なテクニックを指します。
この記事では、英語プレゼンの質疑応答で使える具体的な「逃げ方」のフレーズや、ピンチをチャンスに変えるコミュニケーション術をわかりやすくご紹介します。これらを習得すれば、質疑応答への恐怖心がなくなり、より堂々とプレゼンに臨めるようになるはずです。

質疑応答での「逃げ」と聞くと、ネガティブな印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、ビジネスの場においては、不確かな情報を伝えたり、沈黙してしまったりすることの方が大きなリスクとなります。適切な回避術を身につけることは、プレゼンターとしての信頼を守ることに直結します。
多くの日本人が英語の質疑応答でパニックになる原因は、「完璧に答えなければならない」という思い込みにあります。しかし、ネイティブスピーカー同士の会議であっても、その場で答えられない質問が出るのは日常茶飯事です。専門外のことや、まだ調査が終わっていないことに対して、正直に「今は答えられない」と言うのは誠実な対応です。
重要なのは、分からないことに対してどう振る舞うかという姿勢です。言葉に詰まってオドオドしてしまうと、プレゼン全体の説得力が損なわれてしまいます。あらかじめ「逃げ道」としてのフレーズを用意しておくことで、精神的な余裕が生まれ、結果として質疑応答全体のパフォーマンスが向上します。
プロフェッショナルな「逃げ」とは、相手の質問を尊重しつつ、現状で可能な最善の対応を提示することです。これにより、質問者との良好な関係を維持したまま、スムーズに次のトピックへ移ることが可能になります。
英語のコミュニケーションにおいて、最も避けるべきは「沈黙」です。質問を投げかけられた後に長く黙り込んでしまうと、相手は「聞こえていないのか」「理解していないのか」「怒っているのか」と不安や不信感を抱いてしまいます。たとえ答えが見つからなくても、何かしらの反応を即座に返す必要があります。
「逃げ方」のフレーズを覚えておくと、考える時間を稼ぐことができます。例えば、「それは非常に興味深い質問ですね」といったクッション言葉を挟むだけで、脳が英語の回答を組み立てるための数秒間を確保できます。この数秒があるかないかで、返答の質は劇的に変わります。
また、言葉を繋ぎ続けることで、会場の空気感をコントロールできるようになります。自信を持って発言し続ける姿は、聴衆に対して「このスピーカーは状況を掌握している」という安心感を与えます。英語力そのものよりも、対話のテンポを崩さないことの方が、プレゼンの成功には不可欠です。
質疑応答で沈黙を避けるためのメリット
・聴衆に安心感と自信を感じさせることができる
・自分の脳が英語を処理するための時間を稼げる
・コミュニケーションの主導権を握り続けられる
ここでの「逃げ方」とは、質問を無視したり、適当な嘘をついて誤魔化したりすることではありません。相手の質問の意図を汲み取った上で、「現時点では詳細な回答が難しい理由」を明確に伝え、その後のフォローアップを約束することを指します。これがビジネスにおける誠実な対応です。
例えば、数値の根拠を聞かれて分からない場合、「手元に資料がないので、後ほどメールで正確な数字を送ります」と答えるのは立派な回答です。相手は「正確な情報を知りたい」という目的があるため、適当な推測を聞かされるよりも、後で確実なデータをもらえる方が助かるからです。
このように、質疑応答の目的を「その場で解決すること」から「必要な情報を適切に共有すること」へと視点を変えてみましょう。そうすることで、答えられない質問に対しても、建設的な提案を含めた「逃げ」ができるようになります。
質疑応答で最も焦るのは、相手が何を言っているのか全く分からない時です。発音の癖やスピード、あるいは専門用語の壁など、原因は様々ですが、分からないまま放置するのは禁物です。理解できない時に使える、丁寧でスマートな聞き返しの技術を身につけましょう。
質問が聞き取れなかった際、単に "What?" や "Pardon?" と聞き返すのは、ビジネスの場では少しカジュアルすぎたり、不躾に聞こえたりする恐れがあります。より丁寧でプロフェッショナルな印象を与えるフレーズを使いましょう。まずは相手の質問を受け止める姿勢を見せることが大切です。
「申し訳ありませんが、もう一度おっしゃっていただけますか?」と頼む際は、"I'm sorry, could you say that again, please?" や "Would you mind repeating that for me?" といった表現が適しています。また、周囲の騒音やマイクの状態を理由にするのも、角を立てずに聞き直す良いテクニックです。
さらに、スピードが速すぎて追いつけない場合は、具体的に「もう少しゆっくりお願いします」と添えましょう。"Could you speak a little more slowly?" と付け加えることで、相手も配慮してくれるようになります。恥ずかしがらずに、コミュニケーションを成立させるための努力を惜しまないようにしましょう。
丁寧に聞き直すための英語フレーズ例
・I'm sorry, I didn't quite catch that. Could you repeat the question, please?
(すみません、よく聞き取れませんでした。もう一度質問をお願いできますか?)
・Could you please speak a little louder? I'm having trouble hearing you.
(もう少し大きな声で話していただけますか?少し聞き取りにくくて。)
断片的には聞き取れたけれど、全体の意図に自信がないという場合は、自分の言葉で言い換えて確認する「パラフレーズ(Paraphrase)」が有効です。「あなたの質問は、〇〇ということでしょうか?」と確認を入れることで、誤解を防ぐことができます。これは「逃げ」というよりも、むしろ高度なコミュニケーション技術です。
フレーズとしては、"If I understand correctly, you are asking about..." や "So, your question is whether..." と始めます。このように自分の理解を提示すれば、もし間違っていても相手が修正してくれます。また、この確認作業自体が「考える時間」になるため、非常に効率的です。
パラフレーズを行うことで、質問者に対しても「あなたの話を真剣に理解しようとしています」というポジティブなメッセージを送ることができます。たとえ完璧な英語でなくても、要点さえ合っていれば、その後の回答がスムーズに進むようになります。
パラフレーズのヒント
相手の言葉をそのまま繰り返すのではなく、"In other words"(つまり)などの言葉を使って、自分なりに要約してみましょう。これによって、お互いの認識のズレを早期に発見できます。
二度聞き直しても、パラフレーズを試みても理解できないという最悪のケースも想定しておきましょう。その場で何度も聞き直すと時間が過ぎてしまい、他の聴衆を退屈させてしまいます。そんな時は、一旦その質問を脇に置いて、後で個人的に対応する形に持ち込むのがベストな「逃げ方」です。
「私の理解不足で申し訳ないのですが、プレゼン終了後に個別にお話しさせていただけますか?」と提案しましょう。英語では、"I'm afraid I'm not following you. Could we discuss this in more detail after the session?" と言えばスマートです。これで、その場の気まずい空気をリセットできます。
個別対応を提案することは、決して失礼なことではありません。むしろ、一人の質問者のために全体の進行を止めることの方がマナー違反とされる場合が多いです。潔く「後ほど」と伝える勇気を持つことで、質疑応答の全体の流れを守ることができます。
質問の内容は理解できたけれど、その回答を持ち合わせていない場合もあります。データの詳細、将来の予測、あるいは自分の権限では答えられない事項などです。ここでは、無知を晒すことなく、プロとして適切に回答を保留するテクニックを解説します。
質問が自分の担当範囲を超えている場合や、現在のプロジェクト段階では未確定の事項である場合は、正直にその状況を伝えましょう。無理に答えようとして憶測で話すと、後で大きなトラブルになりかねません。自分の「守備範囲」を明確にすることが、ビジネスにおける安全な逃げ方です。
「その点については私の専門外ですので、担当部署に確認いたします」と言う場合は、"That's outside my area of expertise, but I can check with our technical team." と伝えます。また、「現在調査中であり、現時点では確実なことは申し上げられません」なら、"We are still looking into that, so I can't give you a definitive answer right now." と表現できます。
重要なのは、単に「知らない(I don't know)」で終わらせないことです。なぜ答えられないのかという理由を添えることで、相手の納得感を高めることができます。プロフェッショナルとしての境界線を引くことは、信頼構築の一環です。
回答を保留する時の構成要素
1. 質問への感謝(That's a good question.)
2. 現時点で答えられない理由(It's currently under investigation.)
3. 今後の対応案(I will get back to you later.)
具体的な数字や証拠が手元にないけれど、何かしらのコメントを求められている場合は、「一般論(Generalization)」や「個人的な見解」として回答を濁す手法があります。これは、完全な沈黙を避けつつ、情報の正確性への責任を限定的にする高度な逃げ方です。
「正確な数字は把握していませんが、一般的には〇〇の傾向にあります」と答えるには、"I don't have the specific figures with me, but generally speaking, we are seeing a trend toward..." と始めます。また、「あくまで個人的な意見ですが」と断る場合は、"From my personal perspective..." というフレーズが便利です。
このように、「断定は避けるが、方向性だけは示す」というスタンスは、ビジネスの議論を前進させるのに役立ちます。ただし、あくまで「推測であること」を強調するのを忘れないでください。そうすることで、後で事実と異なっていた場合のリスクヘッジになります。
| シチュエーション | 使えるフレーズ |
|---|---|
| 一般論で話すとき | Generally speaking, ... / In general, ... |
| 推測であることを示すとき | I would imagine that... / I would guess that... |
| 限定的な情報として話すとき | Based on what I know so far, ... |
もしチームでプレゼンを行っている場合や、会場に他の関係者がいる場合は、その人に助けを求めるのも有効な戦略です。一人で抱え込まずに適切な人に振ることは、質疑応答を効率的に進めるスマートな方法と言えます。これも一つの立派な「逃げ方」であり、チームワークの良さをアピールする機会にもなります。
「その件については、同僚の田中が詳しく把握していますので、彼から説明させていただきます」と言うには、"My colleague, Mr. Tanaka, is more familiar with this topic. Ken, would you like to comment on that?" と繋げます。自然な形でバトンを渡すことで、回答の質も担保されます。
もしその場に適切な人がいない場合は、「後ほど担当者からご連絡差し上げるように手配します」と伝えましょう。"I'll have the person in charge contact you later with the details." と言えば、相手も納得して次の質問へと進むことができます。

プレゼンの場では、時に意地悪な質問や、本筋とは関係のない長い意見を述べる参加者が現れることがあります。こうした状況で真っ向から反論したり、困惑したりするのは得策ではありません。場を乱さずに受け流す「大人の逃げ方」をマスターしましょう。
批判的な意見や反対意見を言われた時、感情的になって言い返すのは避けましょう。まずは相手の意見を認める(Acknowledge)ことが、火に油を注がないための鉄則です。「貴重なご意見ありがとうございます」と受け止めることで、相手の承認欲求を満たし、攻撃性を和らげることができます。
「興味深いご指摘ですね。検討材料とさせていただきます」と言う場合は、"That's an interesting point. We will certainly take it into consideration." と伝えます。これ以上の議論を望まない場合は、「貴重なフィードバックを感謝します。では、次の方の質問に移りましょう」と即座に切り替えます。
相手と議論を戦わせることが目的ではなく、プレゼンを円滑に進行させることが目的であることを忘れないでください。同意する必要はありませんが、無視もせず、「受け流す」ことがスマートな大人の対応です。
受け流しのポイント
相手の意見に対して "Yes, but..."(はい、しかし)と反論するのではなく、"I see your point."(おっしゃることは分かります)と一度受け止めるのがコツです。その上で、「別の視点もあります」と自分の意見を添えるか、そのまま次の話題へ移ります。
質問が非常に細かすぎたり、プレゼンのメインテーマから大きく脱線していたりする場合、そのまま答えていると他の聴衆の時間を奪ってしまいます。このような時は、「時間の制約」を理由にするのが最も自然でスマートな逃げ方です。自分ではなく「時間」のせいにするのがポイントです。
「非常に重要なトピックですが、本日のプレゼンの主旨からは少し外れますので、後ほど個別に議論させていただけますか?」と提案しましょう。"That's a very specific case. To keep us on track, perhaps we could discuss it one-on-one after the presentation?" と伝えれば、周囲も納得してくれます。
この手法は、答えづらい質問をされた時の時間稼ぎや、回答を回避したい時にも非常に有効です。プレゼン全体の構成を守るという「大義名分」があるため、質問者も不快に思うことなく、一旦引き下がってくれるはずです。
返答に窮するような鋭い指摘を受けた時、すぐに答えようとすると言葉が支離滅裂になりがちです。そんな時は、長めの「クッション言葉」を使って思考の時間を稼ぎましょう。これは英語プレゼンにおける「戦略的中断」とも呼べるテクニックです。
例えば、"That's a very tough question to answer on the spot. Let me think about that for a second..."(それは即座に答えるには非常に難しい質問ですね。少し考えさせてください)や、"I'm glad you brought that up. It's an issue we've been debating internally as well."(その点に触れていただけて嬉しいです。社内でも議論になっている課題です)といった表現です。
これらのフレーズを言っている間に、頭の中で回答の骨子を組み立てます。もし名案が浮かばなければ、そのまま「現時点では明確な答えが出ていない」という結論に繋げても構いません。パニックを鎮め、冷静さを取り戻すための「魔法の数秒間」を作り出しましょう。
時間を稼ぐためのクッション言葉フレーズ
・That's a very insightful question. Let me take a moment to address that.
(鋭いご質問ですね。その点についてお答えするために、少しお時間をください。)
・Thank you for asking that. I've actually been expecting that question.
(ご質問ありがとうございます。実はその質問が出るのではないかと思っていました。)
「逃げ方」を知っているだけでは、本番で咄嗟に言葉は出てきません。スポーツと同じで、反射的にフレーズが口から出るように練習しておく必要があります。ここでは、質疑応答の不安を最小限にするための具体的な準備方法についてお伝えします。
プレゼン準備の仕上げとして、必ず「予想質問集」を作成しましょう。自分が聴衆だったらどこを突っ込みたいか、どの説明が不足していたかを客観的に見直し、あえて弱点を見つける作業です。そして、それぞれの質問に対する回答を英語で準備しておきます。
ここで重要なのは、「答えられない場合の回答」もテンプレート化しておくことです。「このデータについて聞かれたら、まだ未公開だと答える」「競合他社について聞かれたら、コメントは控えると答える」といった具合に、あらかじめ逃げ道を決めておくのです。
準備した回答があるというだけで、本番の心理的なプレッシャーは大幅に軽減されます。万が一予想外の質問が来ても、「準備したフレーズを組み合わせて逃げればいい」という自信が、あなたを支えてくれるでしょう。
質疑応答で使える便利なフレーズは、理屈で覚えるのではなく、何度も口に出して「体」で覚えましょう。ピンチの瞬間に脳はフリーズしやすいため、考えなくても口が動くレベルまで落とし込むことが大切です。特に汎用性の高い「聞き直し」や「時間稼ぎ」のフレーズは重点的に練習します。
例えば、"Thank you for your question. Could you please clarify what you mean by...?"(ご質問ありがとうございます。〇〇はどういう意味か、もう少し詳しく教えていただけますか?)というフレーズは、質問が曖昧な時や、自分の理解が追いつかない時に非常に重宝します。
こうしたフレーズを10個ほど厳選し、お風呂の中や通勤中などに繰り返し呟いてみてください。英語の音に慣れておけば、いざという時に口から滑らかに出てくるようになります。この「反射神経」こそが、質疑応答の成功を左右する隠れた武器になります。
反復練習のコツ
鏡の前で、笑顔を作りながら練習してみましょう。厳しい質問に対しても、笑顔で「That's a good question!」と言えるようになれば、会場の雰囲気はあなたの味方になります。
質疑応答の時間を自分でコントロールすることも、立派な「逃げ」の一環です。終了時間が近づいてきたら、「あと一人だけ質問をお受けします」と宣言することで、難しい質問が次々と飛んでくる状況を物理的に遮断できます。
フレーズとしては、"We have time for one last question." や "I'm afraid we're running out of time, so let's make this the last one." を使います。このように終わりを明示すれば、その後に質問したい人がいても「個別でお願いします」と断る正当な理由ができます。
また、一つの質問に長く答えすぎないことも重要です。一問一答をテンポよく繰り返すことで、追求される隙を与えず、スマートな印象を残したままプレゼンを終えることができます。質疑応答の「出口」を自分で設定する意識を持ちましょう。

英語プレゼンの質疑応答において、完璧に答えることよりも大切なのは、コミュニケーションを途絶えさせず、プロフェッショナルな態度を貫くことです。本記事で紹介した「逃げ方」は、自分を守り、プレゼンの成功を守るための強力なサポーターとなります。
まず、「分からない」を恐れず、沈黙を避けるためのクッション言葉や聞き直しフレーズを身につけましょう。相手の質問を正しく理解しようとする姿勢そのものが、誠実さとして評価されます。また、手元に情報がない場合は、潔く後日のフォローアップを提案するのがビジネスの正解です。
さらに、攻撃的な質問や脱線した意見に対しては、まともに戦わず、「時間の制約」や「個別の議論」へ誘導するテクニックを使いましょう。常にプレゼン全体の進行を優先する視点を持つことで、どんなに難しい質問者が現れても冷静に対処できるようになります。
最後に、これらのフレーズを「お守り」として丸暗記し、事前の予想質問集とセットで準備しておいてください。適切な「逃げ方」を知っているという心の余裕が、あなたの英語プレゼンをより自信に満ちた、素晴らしいものに変えてくれるはずです。